映画情報『トウキョウソナタ』
ネタバレになるので詳しくは書かないが、黒澤清監督のこの映画『トウキョウソナタ』のラストシーンは、近年の日本映画史上、まれにみる秀逸、傑作だと思う。おそらくこの映画はこのラストシーンで国境、人種、性別、宗教、主義思想を越えたのだといっていい。それが、2008年カンヌ国際映画祭の「ある視点」審査員賞受賞に結びついたのだろう。で、そこまでの1時間50分、説話文学としての傾向の強い脚本は、要するにそのまんま作り話なのだが、本来映画とはそういうものにリアリティを如何に持たせるか、コトバを換えていえば、ありそうもない話をさもありなんと誑かすかが監督の力量なのである。私はこの映画を観ながら、ああ、これは安吾の『堕落論』であるし、ニーチェの芸術に寄せるコトバは正しいなと心底思った。どこぞの成り上がり監督が興行収入のみを笠に着て、自分の映画の試写でスタンディングオベーションとやらをしてくれた、最近太り気味の若手俳優を「よし○○木に決めた」なんぞ、いやもう成り金そのままの威張り散らした言を吐いて、その映画がオンエアされるそうだけど、私は今回もパス。駄馬は駄馬どうし、馴れ合っていればよろしい。そやつの映画は『笑いの○○』で懲りているのだ。ようもまあ、あれだけ観客を舐めた映画が作れるもんだ。本作品がみかけはラプソディなのだが、ソナタであることは一目瞭然。こういう職人芸が『丘を越えて』から続いているので、余は満足じゃ。
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